高校2年生6月
第24話
その後、メンバーは軽めのダウンをしてから昼食を摂る。

そして、15時からの3回戦に向けて先ほどと同じメニューでアップを開始する。
設楽「次の相手は座命館慶祥だ。なかなかの強豪だが、主力メンバーが何人か怪我で試合に出られていない。後半あたりから怪我のメンバーも試合に出てくるかもしれないから、前半でのリードが大事になる。そこで、先ほどの布陣の4-5-1から、前半は4-3-3で攻撃的に行く。メンバーはさっきと同じだが、巧輝がセンターフォワードの位置に入る。賢吾はセカンドトップ的な位置で。ボランチは置かないから、DFラインとサイドハーフの運動量は多くなるが、前線の枚数を増やしたから、ロングフィードが多めになるはずだ。」
この指示を受け、再び選手たちでミーティングを行う。

選手が入場する。そして、キックオフは乃木高校。明らかに座命館側に動揺があった。先ほどの4-5-1から攻撃的な4-3-3に変わったのだから。

賢吾からボールがトップ下へ下げられ、ダイレクトで雪弥にボールが渡る。雪弥はファーストタッチで相手を抜き去ると、逆サイドの賢吾へとロングボールを蹴る。
ボールは賢吾に渡る。ライン際をドリブルする賢吾に対して、相手DFはスライディングをかけてくるが、難なくかわす。そこから賢吾は急に中へドリブルするコースを変える。スライディングをかけたDFは焦ったのか、賢吾を後ろから引っ張り、倒してしまう。
DFにはイエローカードが提示され、フリーキックとなる。キッカーは巧輝。ピッチ右側からのフリーキック。右足で蹴れば、ゴール前の選手へのセンタリング。左足で蹴れば巻いたボールで直接ゴールも狙える。巧輝は左足を選択する。
助走を取り、巧輝が手を挙げる。巧輝が助走を開始したタイミングで中にいた選手が動き始める。キーパーはゴール右側に来ると思ったのか、右側にポジションを取っていた。しかし、巧輝の蹴ったボールはファーサイドのサイドネットへと一直線。キーパーは手を伸ばすものの届かず、サイドネットが揺れる。
フリーキックからの先制点だった。

賢吾が巧輝に寄ってくる。
賢吾「この調子で、追加点取るぞ!」
巧輝「あぁ」
そう言って、再び自陣に戻り、ポジションを取り直す。

相手のキックオフでゲームは再開する。FWからDFへボールが下げられる。賢吾がそのボールを追う。相手センターバックはプレッシャーに負け、安易なロングボールを前線へ蹴り込む。
ボールは侑汰の守備範囲にやってくる。侑汰が胸でトラップをする。そのままDFラインでボールを回し、少しずつビルドアップしていく。
俊からの縦パスがトップ下に通ると、チーム全体のスイッチが入る。
賢吾がDFラインの裏へ抜ける動きを見せると、2人のセンターバックは賢吾に引っ張られ、ボランチとの間にスペースができてしまう。そこへは巧輝が走り込む。巧輝の後ろにはピッタリとマークが付いてきていたが、巧輝へパスがやってくる。
相手はチャンスと思ったのか、足を伸ばす。しかし巧輝は、送られてきたボールを右足アウトサイドで相手の右背後へバックスピンをかけて送り出す。巧輝は逆方向、相手の左を一気にすり抜けた。
これで巧輝は完全にフリーとなる。そのままゴールへ向かってつっかけていく。ペナルティーエリアの中へ入っていくが、相手GKは先ほどの試合のループシュートを恐れてか前に出てこない。それを見た巧輝は右足インサイドでゴール右隅へグラウンダーのシュートを放つ。ゴールネットが祝祭のように揺れる。これで2点目。

それからは、少し攻め込まれる時間帯がやってきたがそこを抜け出すと、前半ロスタイムだった。

侑汰からの正確なロングフィードが賢吾めがけてやってくる。賢吾がDFと体を入れ替えて、マークをすり抜ける。ゴールの左側からドリブルしてくる賢吾にGKは集中しており、逆サイド、マイナス気味に入ってくる巧輝に気づかない。賢吾は冷静にインサイドで巧輝へパスを出す。そのボールは少し巧輝からは遠い位置に出てしまったが、巧輝はスライディングしてそのボールに合わせる。
再びネットが揺れる。
その時、主審の前半終了を告げる笛が鳴る。

ベンチでは、先ほどと同じように設楽先生から指示が入る。
設楽「後半は布陣を4-3-3から、3-5-2に変更する。トップ下に巧輝が入る。1人増えた中盤にはDFラインから俊が入れ。 以上!」
それから選手同士の入念なミーティングが行われ、後半へと向かう。

後半のキックオフは座命館。ここでも座命館には動揺が走る。たぶん、ハーフタイムで4-3-3に対するミーティングをしたのだろうが、後半に入って3-5-2に変わった布陣をどう守るか不安になったのだろう。完全に試合の主導権は乃木高校にあった。

座命館のキックオフで後半が始まり、ボールがサイドハーフへとパスが通る。しかし、中盤の数的有利は乃木高校にあり、すぐにプレスがかけられる。焦った相手はDFラインの裏へロングボールを蹴るが、オフサイドとなってしまう。

間接フリーキックから試合が再開される。DFラインと数の多い中盤でボールを回す。相手が来る前にボールを味方へはたく。その繰り返しで相手は段々と消耗してきていた。
そして、巧輝が中盤の高い位置でボールを受けると、前を向く。すると賢吾がちょうど裏へ抜けるところだった。それを見た巧輝はセンターバックとセンターバックの間に速いグラウンダーのパスを送る。両センターバックは足を伸ばすが、届かない。賢吾へとボールが通った。両センターバックは足を出したため、動き出しが遅れた。そのままゴールへドリブルする賢吾。
ミドルレンジからの強烈なシュートを放った。それは相手GKの手を弾き、ゴールの中へと転がっていった。賢吾が追加点を挙げる。

その後も乃木高校のペースで試合は進み、気付くと後半ロスタイム。スコアは7-0。巧輝のハットトリック、賢吾、雪弥、俊がそれぞれ1点ずつ決め、相手のオウンゴールが1点だった。

侑汰の元へとやってきたボールを侑汰はクリアする。そのボールを見届けた主審は試合終了の笛を吹く。

ここまで巧輝はハットトリックを2戦連続で決めている。次の試合でハットトリックを決めれば、後はインターハイ出場を決めるだけだ。

設楽「次の相手は、この試合の勝者だが、たぶん相手は東山第四だろう。」
設楽先生がそう断言することは少ないが、今見ている試合は断言せざるを得ないような点差になっていた。試合終了の笛が聞こえた。スコアは13-0だったー。

■筆者メッセージ
あと3話くらいでこの高2・6月編は終わると思います。なんだが、どんどん一月の話数が多くなっている気がする……。
感想、たくさんください!お願いします!何か要望とか、このメンバーを出して欲しい!などあれば気軽にどうぞ!(高2編での登場は難しいかもしれませんが)待ってます!
Hika ( 2016/02/12(金) 01:01 )