高校2年生5月
第16話
そして迎えた5月25日土曜日。
七瀬はいつもより早く目が覚めていた。
『やっぱり、巧輝君に会えるのが楽しみ』
そして七瀬はたっぷりと時間を使って着ていく服を選んでいた。待ち合わせは巧輝と。奈々未たちは先に行って、準備をしてくれているという。
『何着ていったら良いかな? ななみんに聞いておくべきだったなぁ〜』
少しばかり後悔しながら、精一杯にオシャレする。鏡を見て、
『よし、これなら大丈夫!』
ふと時計を見ると待ち合わせの10分前になっていた。
『急がなきゃ』

待ち合わせの時間を少しばかり過ぎてしまっていたので、巧輝に謝る。
七瀬「ごめん、巧輝君 遅れちゃった」
巧輝「大丈夫 俺も今来たとこだし」
『ホントにドラマみたい……』
巧輝「んじゃ、バス停まで行くか」
七瀬「うん!」
そうして5分ほど2人で歩く。ここで色々な話をしたが、ここでは割愛。

バス停に着くと、すぐにバスがやってきた。2人はバスに乗り込み、窓側に七瀬が座り、隣に巧輝が座る。はたからみれば、どう見てもカップルにしかみえないのは明らかである。
その上、
七瀬「ねぇ、巧輝君 肩に頭乗っけてもええ?」
巧輝「良いよ」
あまり言いたくないが、バカップルにしかみえない。
七瀬「ありかと、巧輝君」
巧輝「全然いいさ」
また2人で話ながらバスに揺られる。七瀬「帰りも巧輝君一緒に帰ろうな?」
巧輝「いいよ」

バスは駅前の渋滞のロータリーに入る。
巧輝「んじゃ、七瀬行くぞ!」
七瀬「うん」
そう言って巧輝は七瀬の手を持って歩き出す。

からんころん ドアを開けると柔らかな音が迎えてくれた。
ぱぁーん!! 急な破裂音とともに色とりどりの紙吹雪や紙テープが飛ぶ。
「七瀬ちゃん、誕生日おめでとう!!」 全員が一斉に言う。
七瀬「みんな、ほんまにありがとう」
もう、七瀬は嬉しくて泣きそうになっていた。

そのあとは、喫茶店のマスターからたくさんの料理が運ばれてきて、そこかしこで談笑が始まる。
奈々未「なぁちゃん、バスの中で巧輝となんかあった?」
七瀬「うん、巧輝君の肩に頭乗せちゃった」
そう言って七瀬は照れる。
奈々未「ラブラブね〜」
七瀬「そんなことないよ」
奈々未「帰りは?」
七瀬「一緒に帰る約束しちゃったよ」
奈々未「なぁちゃん、ダイタン」
七瀬「もう」
そう言って2人で笑う。

美彩「まいやん、良いの?」
白麻「いいわけないじゃない でも、今日の主役は七瀬ちゃんだから今日くらいはね」
深麻「随分と余裕ね?」
白麻「当たり前じゃない だって私よ?」
美彩「狙ったオトコは毎回オトシてきてるオンナが言うと説得力あるね〜」
白麻「やめてよ、人聞きの悪い」
深麻「今更じゃない?」
白麻「そうね〜」
こちらも笑いに包まれる。

1年生グループは、男子が雪弥ただ1人で肩身の狭い思いをしていた。
日芽香「飛鳥ちゃんかわいい〜」
飛鳥「そ、そんなことないよ?日芽香ちゃんの方がかわいいよ〜」
未央奈「もう、2人ともかわいいでいいじゃない」
何だか拗ねたように未央奈が言う。
雪弥「未央奈ちゃんもかわいいよ?」
雪弥は未央奈の機嫌を損ねないように言う。しかしこのセリフを賢吾たちに聞かれてしまう。
賢吾「お?雪弥ナンパか?」
俊「雪弥も高校生だしね〜」
雪弥「ち、違いますよ!」
未央奈「じゃあ、雪弥君が言ったのはお世辞なの?」
未央奈が上目遣いで雪弥を見る。これは反則だ。
雪弥「かわいいっていうのは、ほんとだよ」
賢吾「おおっ!」
賢吾が盛り上げるが、
巧輝「そろそろやめとけよ、賢吾」
俊「そうだねー、雪弥がかわいそうになってきた」
賢吾「楽しかったんだけどなぁ〜」
俊「賢吾も、美彩先輩とかに声かけてみれば?」
賢吾「よっしゃあ、俺も行くぜ! 狙いは麻衣先輩だ!」
巧輝「姉さんかよ ま、がんばれよー」
巧輝は棒読みで賢吾、俊、雪弥を送り出す。
日芽香「巧輝先輩、今日は誘ってくれてありがとうございます」
続けて飛鳥たちも言う。
飛鳥・未央奈「ありがとうございます」
巧輝「いや、来てくれてありがとうな 七瀬も喜んでるから」
そう言って、巧輝は喫茶店の奥にいるマスターの方へと行く。
飛鳥「やっぱり、巧輝先輩カッコいいな」
日芽香「そうね〜 でも、手が届かない…… 高嶺の花って言うのかわかんないけど」
未央奈「確かに先輩はかっこいいけど、私は雪弥君がタイプかな〜」
飛鳥「やっぱり? でも同じ歳ってなんか、先輩方を見てると頼りなく見えちゃうんだよね」
日芽香「それは、巧輝先輩とかがすごいだけってのもわかってるんだけどね」
そう言って、こちらも恋愛トークに花を咲かせる。

巧輝「先生、今日はありがとうございます」
マスター「巧輝、彼女連れて来いって言ったのになんでこうもたくさん呼んでくるかな?」
巧輝「すいません」
マスター「ま、良いけどよ 楽しいし」
巧輝「じゃあ、今度はまた誰かの誕生日パーティーで使わせてもらいますよ」
マスター「しょうがないな お前には借りもあるからな」
巧輝「その話はやめましょうよ」
マスター「そうだな ま、せいぜい楽しめや」
巧輝「ありがとうございます」

そうして、巧輝はまた雑談の中へと混じっていく。
『巧輝も変わったな……』
マスターは1人感傷に浸るのであった。

Hika ( 2016/02/09(火) 22:26 )