高校2年生5月
第9話
もう、すぐそこに迫るクラス対抗競技春大会。生徒会長の麻衣を中心に、生徒会役員は大忙し。放課後の生徒会室では…
深麻「今年の春大会の競技は、サッカーは男女ともに決定で、後の1競技をどうするか何だけど…」
白麻「んー、何が良いかなぁー」
美彩「迷うなー」
巧輝「んじゃ、女子はドッヂボール、男子はバスケットボールでどうでしょう?」
深麻「そうね、男子はバスケットボールで決定にして、女子のドッヂボールはどうしましょう?」
白麻「ドッヂボールは当たったら痛いからなぁ…バレーボールは?」
美彩「あ、良いかも!団体競技だし!」
深麻「それじゃあ、男子はサッカーとバスケットボール、女子はサッカーとバレーボールで決定ね。」
巧輝「それじゃ、企画書作りますね」
白麻「よろしくー」
美彩「巧輝君は仕事が早くて助かりますなぁー」
深麻「それじゃあ、私たちは先生方に説明しに行かなきゃ。まだ職員会議やってるだろうから。」
白麻「そうね、行きましょ?」
美彩「巧輝君、ちょっとお留守番しててね」
巧輝「いってらっしゃいませ〜」
その後10分ほどで企画書を作り終えた巧輝。
置き手紙をして、生徒会室を出ようとしたその時、思わぬ来客が。風紀委員長の秋元真夏だった。
真夏「お疲れ様、巧輝君。」
巧輝「お疲れ様です。先輩」
真夏「風紀委員の朝の見回りの件なんだけど、1人風紀委員が入ったからもう来なくても良いわよ?」
巧輝「ホントですか?」
真夏「会長達には私から言っておくから」
巧輝「ありがとうございます」
真夏「じゃーねー」
巧輝「お疲れ様です」

巧輝は朝の見回りに参加しなくても良くなったからか、何故か足取りも軽かった。その足でグラウンドに向かう。

1年生「こんにちはー!!」
巧輝「おう!」
このサッカー部には自分の上の学年の先輩が来たら大きな声で挨拶しなければならないというルールがある。
そこに日芽香がやってきた。
日芽香「こんにちはー!」
マネージャーも例外ではない。
巧輝「おう、日芽香か」
日芽香「お疲れ様です。今日も練習頑張ってくださいね!」
巧輝「ありがとな、日芽香」
巧輝のこの言葉を聞くや否や日芽香はグラウンドへ走っていってしまった。巧輝は日芽香の行動がよくわからなかったが、グラウンドにあるサッカー部の部室の扉を開け、1人で着替え始める。
着替え終えると、1人で黙々とランニングとストレッチをして、入念にアップをする。基礎練習を奈々未に手伝ってもらって、全体練習に参加する。
ここ最近の巧輝の部活のスタートだ。
設楽「インターハイ予選まで、あと1ヶ月を切った。みんな、今まで以上に全力で練習に励んで欲しい。以上!」
「はい!」
設楽「インターハイのメンバーの発表は来週するからな、まだ間に合うぞ」
「はい!」
侑汰「そんじゃ、練習続けるぞー!今日から1年も混ぜて紅白戦やるぞー」
設楽「気になったプレーあったら止めるから、普通の試合くらいに思ってプレーしてくれよー」
部員達にはランダムに黄色のビブスが配られる。
ピーッ! 試合開始の笛が鳴った。
キックオフは巧輝のいるチームから。FWの1年からボールが巧輝に下げられる。そのボールをダイレクトで左サイドを駆け上がる俊にパスをする。タイミングはばっちり。俊がファーストタッチで相手を抜き去る。そのままペナルティーエリアに突っかけていく。DFがスライディングで取りにくるが、ボールを浮かせてうまくかわす。GKがシュートコースを塞いで前に出てくる。俊は動じることなく、ボールを後ろから走り込む巧輝にパスした。ゴールはガラ空き、DFラインは俊とボールに集中していて巧輝のケアができていなかった。巧輝は確実にインサイドキックでゴールに流し込む。前半開始30秒のゴールだった。
ピーッ! 笛が鳴った。
設楽「おい!DFライン、開始30秒でゴールされてたらたまったもんじゃねーぞ!ラインの統率ができていない。DF全員がボールウォッチャーになってる。誰か1人くらい冷静になれなかったのか?グラウンド5周してこい!」
侑汰「じゃあ、赤ビブス組と黄ビブス組で紅白戦するぞー!」
ピーッ! キックオフは赤ビブス組から。
賢吾がキックオフからボールをDFの侑汰まで下げる。侑汰の精度の高いロングフィードを警戒してか、こちらのDFラインは少しラインを下げる。巧輝は何か嫌な予感がしていた。
侑汰がDFラインが下がるのを予期していたかのようにDFラインとボランチの間に空いたスペースに低い、早いパスを送る。もちろん、そこに走り込むのは賢吾。賢吾はファーストタッチでゴールへと向く。そのタイミングで雪弥がスライディングでボールを奪う。少し蹴りすぎてタッチラインを割ってしまったが良い守りだった。
巧輝「雪弥、ナイスディフェンス!良いカンしてんな」
雪弥「ありがとうございます! 先輩も気づいてると思ってスライディングしたんですけど、今ので大丈夫でしたか?」
巧輝「もちろん!雪弥が向かうのが見えたから、ポジション埋めるように、賢吾に寄せてたからな。後ろからボールも奪えたら良いなって感じで。」
巧輝「雪弥、次サイドにボール上げるから、この間のセンタリングやってみろ」
雪弥「はい!じゃあ、先輩がボール持ったタイミングでサイド駆け上がるのでお願いします」
雪弥はそう言って、ポジションに戻る。
相手のスローインからゲームが再開される。ロングスローでゴール前にボールを放り込む。ゴール前は混戦状態。賢吾がヘディングシュートを狙っているのがわかった。
巧輝「俊!賢吾のケアしろ!」
巧輝は中盤から指示を送る。
予想通り、賢吾がヘディングしようとしたが俊に競り負け、クリアボールは巧輝めがけてフラフラと飛んでくる。
巧輝はボールを胸でトラップし浮いたボールをそのまま右サイドへシュート性のボールを蹴る。バックスピンが効いたボールはタッチライン目前でスピードが落ちる。そのボールを拾ったのは雪弥。そのままコーナーフラッグめがけてドリブルを開始する。3年のDFが寄せてくるが、落ち着いてフェイントでかわす。コーナーまでやって来て、巧輝に教えてもらったセンタリングを上げる。そこに走り込むのは巧輝。侑汰が巧輝にピッタリと張り付くが、巧輝は競り合うふりをしてボールをスルー。ボールは巧輝の後ろにいたFWの足元へ。FWはインサイドでゴールへと押し込む。ボールが白いネットを揺らす。
ピーッ! 笛が鳴る。
設楽「今日の練習はここまで。後片付けして解散っ!」
部員達はその場で「ありがとうございましたっ!」と言い、礼をする。

太陽がちょうど沈み、かすかに緑色の光が見えていた。

Hika ( 2016/02/07(日) 22:10 )