05
俺と芽実ちゃんは店に戻る。席に着くと煮物が置いてあった。
「眞緒さんこれは」
「サービスです。それにここではママですよ」
「そうですか。ありがとうございます」
「ささ、どうぞ」
俺は煮物を口に運ぶ。
「味が染み込んでて美味しい!」
「そう、よかった!」
俺はすぐに食べてしまった。
「そういえば、東村くんとママさんはどういう関係なんですか?」
ママは黙ってしまった。
「なんかすいません。変な事聞いて」
「芽依の両親と私は親友でね、よくこのお店にも来てくれたの。だけど4年前に出張に行くために乗った飛行機が墜落事故を起こして亡くなってしまったの」
「そうだったんですか」
「それで、2人とも親は亡くなっていて兄弟もいないから私が引き取ったの」
「そうなんですね。なんかすいません」
「いいのよ。それにここのお客さんはみんな知っているし」
「そうですか。あっウーロン茶おかわり」
「芽実お願い。あと今日はもういいわよ」
芽実ちゃんはウーロン茶を注いで僕に渡した。
「じゃあお先に上がらせてもらいます」
「おやすみ芽実ちゃん」
「失礼します」
「うちでは芽実と芽依が働いていいのは10時までなの」
時計を見ると10時になっていた。
「芽実の話も聞きたい?」
「え?」
「そう思ってるんでしょ?わかるわよ」
「ええ、まあ」
「あれは2年前ね。うちの店でアルバイトを募集したの。だけど来なくて諦めかけたけど、最終日に来たの」
「芽実ちゃんが?」
「うん、15歳でね。一応面接したの、なんで受けたのか聞いたら、芽実の親は育児放棄していて中学校まで行っていたけど高校には行かせてもらえなくて、働こうと思ったんだって。で、うちで住み込みで雇ったの。親は興味なし、本当に最低な親だったわよ」
「そうなんですね。そろそろ帰ります。いくらですか?」
「いいわよ。今日は特別。そのかわり今後もご贔屓に」
「はい、ぜひよろしくお願いします」
俺はママに見送られて寮に戻った。
次の日、いつものように教室に入ると東村がいた」
「おはよう。東村大丈夫か?」
東村はコクとうなづく。
「大丈夫そうだな。出席を取ります」
いつものように出席を取り、今日の予定を連絡した。
「今日はこんな感じだ。号令」
「起立、礼、ありがとうございました」
その日の夜、俺は今日もスナック眞緒に足を運んでいた。
「こんばんは〜」
「あらいらっしゃい。どうぞ席へ」
もう何人か客が入っていた。
「今日も来ちゃいました。芽実ちゃんもこんばんは」
「こんばんは〜ウーロン茶でいいですか?」
「うん、あと枝豆」
「先生、今日の枝豆は仕入れたてよ」
「仕入れたて?」
ママのおかしな言葉を聞いていると枝豆が出た。
「どうぞ」
「ありがとう、ママさん東村は今日出るんですか?」
「今日は7時半からよ」
時計を見ると7時25分だった。
「もうすこしか。東村はどんな感じなんですか?」
「お客さんから大人気よ。うちではよく働いているわ」
「そうなんだ」
ママや芽実ちゃんと話していると
「ママ〜来たで〜」
「芽依、先生が来てるわよ」
「先生、こんばんは」
「こんばんは」
東村はメイクをして、着物を着ていた。
「ママ〜泡盛2つちょうだい」
「芽依、泡盛2つお願い」
東村はコップに泡盛を注ぐとお客さんのもとへ運んだ。
「どうぞ〜」
「ありがとう」
しっかり仕事していて安心した。
3人と話したり料理を頂いたりしていると、
「あら、お醤油がない。2人とも店番お願いね」
ママが買い物に行った。すると、
「ママ〜、ビールちょうだい〜」
酔っぱらった客が注文してきた。
東村が持って行くと、
「おう姉ちゃん、いいケツしてんじゃん」
すると、東村の尻に手を伸ばした時、俺がその客の手を叩いた。
「何するんだ!」
「うちの生徒にやめてもらいません?東村、戻りなさい」
東村は家に入った。
「いいじゃねえか。減るもんじゃあるまいし」
「ここはそういうお店ではありません」
ママが帰ってきた。ママに事情を話すと、
「先生は芽依のところに行ってください」
俺は東村の部屋に向かった。