03
1週間後、今日は入学式の日だ。俺は学校に行くためにバスに乗っていた。朝のラッシュのため、かなり混んでいる。俺はスマホで音楽を聴きながらバスに揺られていると、横の女子高生が小声で
「やめてください」
と言っているのが聞こえた。俺は瞬時に痴漢だと察知した。女子高生の後ろには中年のおっさんがいた。手元を見るとスカートの上から尻を揉んでいるのがわかる。
俺はスマホで痴漢の証拠を撮り、おっさんの腕を掴んだ。
「おい、やめろ!嫌がってるだろ!」
「なんのことだ!失礼だぞ!」
ちょうどバス停に着いた所でおっさんと女子高生をバスから降ろした。
「警察に通報したからな!」
「私は痴漢なんかしていない!!証拠を出せ!」
俺はスマホの画面を見せた。
「あんたがこの子のお尻を揉んだ証拠はここにあるんだよ!」
おっさんは黙り込んでしまった。すぐに警察がきておっさんは逮捕された。俺と女子高生は簡単な事情聴取を受け、解散になった。女子高生が俺の所にやってきた。
「さっきはありがとうございました。私こう言うの言いづらいタイプで、お名前伺ってもよろしいでしょうか?」
「いえ、名乗る程ではないので。失礼します。」
俺はそういってその場を去った。学校に着くとギリギリの時間だった。急いで準備をした。
生徒は体育館に集まっている。始業式があるからだ。生徒が並び終わると、校長がステージに上がって話し始めた。
「皆さん、進級おめでとうございます。さて……」
校長の話が終わり今度は教室に戻る。もう生徒は新しいクラスと担任は知っている。
俺は教室に入る。
「はーい、席に着いてください。私はこのクラスの担任の小坂裕翔です。担当は社会です。皆さんよろしくお願いします。」
「あーっ!!さっきの!!」
「あれ⁉君はここの生徒だったんだ。」
さっき痴漢から助けた女子高生がうちのクラスの生徒だったのだ。
「まず皆さんには簡単な自己紹介をしてもらいます。まずは潮さんから」
さっきの女子高生だ。
「潮紗理菜です。さっきは助けていただきありがとうございました。」
「どう言う事ですか?」
と色んな生徒が尋ねてくる。
「朝学校にくる時に潮さんを痴漢から助けたんだよ。」
生徒はかっこいい〜とか言っている。
俺はとりあえず全員の名前と趣味などを話してもらった。
「はい全員の名前も聞き終わった所だし、配る物配っちゃいましょう。まず教科書配るから」
俺は20人分の教科書を配る。
全部の教科書を配り終わる頃には俺はヘトヘトだった。他にもいろいろな書類も配った。
「はい、今日はここまでです。入学式の準備がないものは速やかに下校すること。わかったな?」
『はーい!!』
「よし、じゃあ号令だ。起立!礼!」
『ありがとうございました!!』
「はい、すぐに帰りなさい。」
俺は職員室に向かった。椅子に座ると、宮田先生がお茶を持ってきてくれた。
「お疲れ様でした。どうぞ」
「ありがとうございます。」
お茶を一口飲んだ。
「どうでした?初めてのホームルーム」
「いや〜意外と緊張しますね。早く慣れたいです。」
「そうですか。」
お昼は近くのコンビニで弁当を買ってきて食べた。そして校長に無理を言って今回は保護者席で参加させてもらった。親父達は仕事の都合で参加できないので俺がカメラを回す事になった。
入学式が始まった。新入生が入場している。2組が出てきた。高瀬先生に連れられて生徒が入場してくる。菜緒が入ってきた。菜緒はこっちを向いている。さすがに手は振らなかった。
校長の話が始まった。みんな静かに聞いている。
入学式が終わり、俺は菜緒の所に向かった。
「お疲れ様、かわいいかったよ。」
「ありがとう。お父さんとお母さんにビデオ送るの?」
「うん。菜緒、俺まだ仕事があるから先帰ってて。」
「わかった。じゃあね」
菜緒は寮に向かって走り出した。
職員室に戻り仕事を終えて寮に帰った。