曲がり角を曲がれば。







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第5章
21 ふたたび。
気持ちが晴れないまま。
日曜日の朝を迎えてしまう。
待ち合わせした駅の入り口にいた。


結局眠れずそのまま朝になる。
家に帰ってからずっと。
飛鳥のことだけがずっと。
頭の中に残っている。


「いまの幸平さんが好きです」


「昔の幸平さんも、いまを生きてる幸平さんもどっちもあたしは好きです」


飛鳥とは高校からの後輩。
飛鳥のことは少しは知ってる。
ケーキをよく食べること。
幽霊と雷がダメなこと。
強引な性格の人と自分勝手な人間が大嫌いなんだということ。


でも、俺は。
飛鳥じゃなくて、お嬢様を。
お嬢様のことが…


「変態兄貴」


声でハッとする。
いつのまにか目の前には。
未央奈がいた。


「あ、あぁ。久しぶり」


「荷物持ってよ」


スーツケースを押し付けられる。
相変わらずなヤツ。


「でさ、お腹空いたんだけど」


「急にそんなこと言います?」


「あ?」


「なんか近くにあったっけなぁ」


急いでスマホで検索する。
「あ?」が怖すぎだろ。
前よりも怖くなってる気がする。


「アップルパイが食べたい」


「はいはい、分かりました」


だったら、あそこにしよう。
アップルパイが特に美味しい店に。
未央奈が喜べばいいけど。
こいつ文句しか言わないから。


「よし、んじゃこっち」


家とは逆方向を歩き始める。
スーツケースが重いんですけど。


「へぇ、お店知ってるんだ」


「東京で働いて3年目なんだから。そりゃ多少はお店くらい知ってるわ」


「絵梨花さんと来てるんだ」


え、え、絵梨花さん?
そんな呼び方してましたっけ?


「そ、そんな呼び方してたっけ」


「なに?なんか悪い?」


「いや、そうじゃないけど」


「じゃあいいよね」


そういや、お嬢様の名前なんて久しぶりに他人から聞いたかもしれない。
俺自身、名前で呼ぼうと思ってもなかなかタイミングを見出せないままだ。


「もちろんお金はまかせるから」


妹系の漫画とかをたまに見る。
現実を知ってるからこそ。
夢見せないでほしい。
ちゃんとした次元で生きろ、俺。


現実ってのは目の前にあるのが。
知るのに一番いいと思ってる。


そりゃあ、こんなのだから。
嫌になるのもよく分かる。


でも、俺からすれば家族だから。
大事にしたい気持ちの方が勝る。


「真司は何してんの」


「知るか」


やっぱさっきの言葉、キャンセル。

■筆者メッセージ
11月が終わりますね。
このまんまじゃ終わらない。


なんとかしたいです。
感想お待ちしております。
ガブリュー ( 2018/11/30(金) 00:34 )