15 貧乏でもいいじゃねぇか。
空が赤くなり始めた。
未央奈はどこに行ったんだ。
電話も出ない。
なら、もうあそこしかない。
行ってみると案の定。
未央奈がいた。
「何やってんだ」
無人駅のホーム。
古びた椅子に座ってる未央奈。
田舎町にはぴったり。
未央奈は俺と顔を合わせない。
「帰って」
「ここまで来て帰れるか。ったく、墓掃除するために買い物に行こうと思ってたのに財布忘れてきちまったよ。ほら、帰ろうぜ」
未央奈は黙ったまま。
たまには俺からも話してみるか。
「…手紙大切にとってたんだな」
「あんたに関係ない」
「俺すげー嬉しかった。だって、未央奈から返事来なかったから読んですぐ捨てたのかなとか考えてさ。でも、ちゃんととっててくれたから嬉しかったよ。ありがとな」
「うちは両親いないし、どちらかっていえば貧乏だよ。でも両親がいなくたって、貧乏だって、楽しく生きていけんだよ。マイナスな方に持っていくんじゃなくて少しでも明るい方が俺的にはすげーいいと思う」
「お父さんとお母さんがいなくて、突然急に寂しくなったらどうしたらいいの」
「甘えろよ、誰にでもいいから。俺でも真司でもいいじゃねぇか。あいつは、俺に協力してくれたから借金も無事返せたんだよ。未央奈が辛くて立ち止まった時は俺が絶対立ち直らせてやる。泣きたくなったら、慰めてやる。笑いたい時は一緒に笑う。それが家族なんじゃねぇの。俺たちはお互いにかけがえのない存在だろ」
「どんだけ就職試験に落とされても、毎日頑張ったのは無駄じゃない。必ず意味があるんだよ。だから、絶対負けんな」
未央奈は走り去って行った。
いつから溝が出来たんだろう。
俺は家族を守るために、目の前の大きな借金を真司と協力して片付けた。
自分のしてきたことは正しかったと自分では思っている。
でもそうとは限らない。
未央奈が辛い思いしていた事実。
金のことばかり考えていた日々。
俺は自己満足してただけ。
金を返すことだけが正しい訳では無いのに、ずっとそうし続けていた。
もうすぐ夏も終わる。
ツクツクボウシがよく鳴いてる。
23歳になった俺。
社会人として頑張るために今をもがいている未央奈。
正社員目指して就活中の真司。
溝を完全に埋める。
家族のつながりをもっと強くする。
あと7日間の重要ミッション。