曲がり角を曲がれば。







小説トップ
第4章
14 苦悩。
いつも嫌いだった。
優しい兄が大嫌いだった。


私と違ってなんでも上手くいって。
借金と短大のお金を負担して。
それでもいつも笑ってて。
仕事が忙しくて大変なはずなのに空いてる時間を使ってわざわざ手紙まで書いて心配してくれたり。


お父さんとお母さんが死んだのが私が小学5年生の時。朝までは見送ってくれたのに、夕方には冷たくなって2度と目を覚ますことはなかった。


沢山泣いた。
でも兄は泣かなかった。
お父さんの手をずっと握っていた。


「俺がふたりを守るから。大丈夫だから、心配しないでどうか見守っててください」


それから発覚した借金。高校までのお金はお婆ちゃんが負担してくれた。
兄は高校を卒業してから働いた。
少ないお金で借金を返していった。


それから黙って東京に行った。
毎月口座に少ないお金が入っていた。
高校卒業するときに、手紙が来た。


『卒業おめでとう』


それだけしか書いてない手紙。
東京で何してるんだろう。
仕事のこととか、どこに住んでるのかも何も教えてはくれなかった。


季節が秋から冬に変わろうとしてる時に、2通目の手紙が届いた。
多くのことが書いてあった。


洋食屋さんで働いてること。
お店の上司の人が借金を一部立て替えてくれたこと。少し古めのアパートで毎日忙しいけど、楽しくやってること。


料理のイメージなんてなかった。
工事現場で働いてると思ってた。
厨房で料理とか作ってるのかな。
それとも雑用をひたすらしてるのか。


『短大、目いっぱい楽しめよ』


最後にそれだけ書いてあった。
それからまた暫く手紙が途絶えた。


手紙は返さなかった。
返したくなかった。


ビリビリに破いて捨てたかった。
どうしても手が止まって出来ない。


就活で苦戦して。
30社以上受けて、不採用。
最終面接まで行ったのにやってくるのは決まって不採用の通知。
もう心はとっくに折れていた。


みんな次々決まっていった。
アパレル関係、大手企業、自分の夢を叶えて内定を掴み取っていった。


私だけ置いていかれた。
今度の入社試験も自信が無い。
自信はいつの間にか消えていた。


そんな中、兄が久々に帰ってきた。
隣にはお似合いな人を連れてた。


どれだけ頑張っても勝てない。
いつも私は負けてばかり。
どうやったら追い越せるの。


答えは出なかった。
それが分かるのが怖くて。


自分には実力がない。
誰からも必要とされてないんだ。


不満をぶちまけた。
寂しさと嫉妬と悲しさが爆発した。


一生分かってもらいたくない。
私はあんたに苦しめられてたんだ。


この苦しさがあんたには分からない。

■筆者メッセージ
ぺこさん
お久しぶりですね。
久々の拍手メッセージ、すごい嬉しかったです。こんな作品でも待っててくださるのは非常にありがたいです。

責任をもって完結まで書きますので、これからも応援よろしくお願い致します。

感想お待ちしております。
ガブリュー ( 2016/10/24(月) 23:46 )