02 またやってきた夏。
「今日、花火大会あるんすね」
掲示板に貼られていたチラシ。
数百発上がるという小さい花火大会。
ちょっと行ってみたいとも思う。
「もう8月っすね」
今日は8月1日。
夏本番って感じの空。
それと疲れきったお嬢様。
「どうしたんすか?」
「あっつい。こんなに暑いの」
「そりゃ、夏だし」
「あなたの力で冬にして」
俺にそんな権力ありません。
神様に頼んでください。
たぶん却下だろーけど。
「あれ?幸平」
目の前から聞き覚えのある声。
トレーニングウェア姿の小百合。
「こんな所で会うなんて」
「あ、あぁ。おはよう」
「仕事は?」
「今日は休み。先週休みだった先輩の次が俺だったからね。今日は何もなし」
「いいなぁ。仕事変わって」
「変われるもんならね」
小百合が掲示板に近づく。
花火大会のチラシを見つける。
「もうこんな季節なんだ」
「夏だから。もういい加減」
「花火大会行きたいなぁ。でも仕事だし、忙しいから行けないんだよね。会社の窓から花火見よっかな」
「じゃあね、幸平」
「はいよ。仕事頑張って」
朝7時だってのにクソ暑い。
気持ち的にはアガるけどだからといって暑いのは嫌いな俺。
お嬢様は夏はどうなんだろう。
「私は夏が好きよ」
「好きですけど、暑いじゃないすか。それがマジで嫌です。どちらかと言ったら夏よりも春が好きです」
「暑さぐらい我慢しなさい」
いやいや。
冬にしてとか俺に言ってたのはどこの誰なんでしょうか。あなたですよ。
早く夏休みなんねぇかな。
愛知に帰って、海行って、友達と飲みに行って、夏っぽいこと沢山したい。
「じゃあ、帰りますか」
「そうね。朝ごはん食べなきゃ」
世間は夏休み。
社会人は普通に働く日。
学生は部活か勉強をしてる。
高校の頃に戻りてぇ。
俺を慕ってた後輩、仲良くしてくれた同級生、優しかった先輩、俺が出会ったたくさんの人に会いたくなった。
みんな変わっててもいい。
どのみちに進んでたっていい。
言えなかったあの言葉。
「ありがとう」とかの言葉。
「なにしてるのよ」
またぼーっとしてた。
考え事ぐらいさせてくれ。
「早く帰りますか」
ケータイに保存してある写真。
卒業式の時の集合写真。
いつ見てもみんな笑ってる。
あの時のみんなの笑顔が俺の宝物。