08 はじめての朝。
翌日の朝。
朝の6時半に起きて、お嬢様の言った通りに特製カフェオレとお嬢様を起こすための準備は整った。
今の時刻は8時14分。
今日の占いは3位だった。
ラッキーアイテムは高価なもの。
そんなもんは持ってません。
今日の仕事は午前中だけ。
午後は家に帰って寝る予定。
お嬢様の部屋をゆっくり開ける。
寝息を立てているお嬢様。
そっと近づいて肩を叩く。
寝返りを打つだけで起きやしない。
「おはようございます」
耳元にそっと囁く。
こすりながら目をゆっくり開く。
「おはよう・・・」
「俺もうすぐ仕事行きますよ。今日は木曜なんで午前中までですけど」
お嬢様はゆっくり起き上がると洗面台に向かって顔を洗い始める。
白い肌が水を反射してその白さをより一層輝かせてるような気がした。
「私もついて行っていい?」
意外すぎる答え。
お店に連れてくのか。
今日の移動手段は電車だ。
「暇っすよ。ほんとにいいんすか?」
「あなたの仕事ぐらい見たっていいでしょ。どうせなにもないんだし」
「いや、そうですけど・・・」
「はい、決まり。文句はなし」
勝手に決まった。
お嬢様はちょっと強引かも。
「なぁ、アニキ。俺の財布知らない?昨日帰ってきてからないんだけど・・・」
薄い目をこすりながらやってきた真司。俺以外の人物に気づいて目を合わせる。
「うわっ!えっ、えええっ!?アニキ、誰だよその人。小百合さんと別れてまだそんな経ってないのに。そ、そういうことなんだ。もう同棲するぐらいのそういう仲なの?」
朝からうるせーな。
驚く気持ちは分からんでもないが、正直うるさすぎる。ちょっと説明するか。
「昨日の夜からこの人をうちに泊めることになった。うちの店によく来てくれた人なんだよね。まぁ、ちょっと事情があってしばらくはうちにいることになったから」
「アニキ、そういう嘘はいいよ」
なんで嘘言う必要あんだよ。
俺は真実しか話してないのに。
「あれでしょ?小百合さんと付き合ってる時にもう一人この人と付き合ってたっていう。控えめで遠慮がちなアニキもそんなことまでするようになったなんて・・・」
こいつと話してても疲れる。
さっさと仕事に行こう。
「朝ごはん済んだら出ますよ」
真司に朝飯を出しておく。
あいつの大好きなフレンチトースト。
準備に手間取った。
まぁ、俺とお嬢様も食べたけど。
アイスコーヒーを一気に飲む。
俺はもうとっくに食べ終わってたし。
「ご馳走様」
青のヒラヒラスカートのワンピース。
今日もお嬢様は綺麗だ。
「行ってきまーす。家出る時はちゃんと鍵をかけて出ろよ。じゃーな」
ドアをゆっくり閉める。
今日の天気は晴れ。
また暑い一日になりそうだ。
こんな日は店の夏限定オリジナルデザートのメロンの果肉入りかき氷がよく売れる。
みんなで話し合って決めた1品。
オーナーも二つ返事でOKしてくれた。
「2時半まで耐えたら休みか」
さてと、今日も頑張るか。
目を閉じて大きく深呼吸をする。
動きを止めて風の音を聞く。
今日もいい日になりますように。
親父と母さんにそっと語りかける。
駅までの道をゆっくり歩き始める。
最高の1日になるように願いながら。