曲がり角を曲がれば。







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第3章
02 辛いのはお嬢様なんだ。
「・・・というわけでして」


店にお嬢様を連れてきた。
お嬢様はずっと下を向いたまま。
何か反応してくれ。


「それは困ったな」


新聞記事を読み返しながら、店のオーナーである大久保光次さんは何度も椅子を回転させて、たまに壁に足をぶつけている。


「うちの店をご贔屓にしていただいたお客様だからな。少しでもその恩を返したいところなんだが」


「は、はぁ」


「よし幸平。お前が引き取れ」


・・・はい?
いやいや、何言ってんの。
俺がお嬢様と同棲?
そんな冗談やめてくれ。


「丁度いいんじゃないか。お前、先月彼女と別れたんだろ。どうせなら愚痴を聞いてもらえ、ストレス発散だぞ」


オーナーに言ってないのに。
新田さんが広めやがったな。
今さら掘り返さないで、頼むから。


「あ、あの。オーナー?」


「身寄りのない女性を1人っきりにさせるわけにもいかないからな。お前はそれに慣れてるし丁度良かったな」


おいおいおいおい。
オーナー、俺の今の知っていらっしゃるんですか?
弟と二人暮らしですよ。
どう考えても住めません。


「今の給料プラス2万でどうだ?」


ふん、オーナーめ。
俺が金で動くと思ってる。
俺は了承なんてしないからな。


「はい、わかりました!」


20000であっさり了承。
あぁ、俺はほんとに単純。
金で釣られただけのアホでした。


「お嬢様、汚いですがうちでよければどうぞ。弟もいますけど」


ゆっくりと顔を上げた。
じっと俺を見つめている。


「いいの?」


「部屋の片付けしますんで、もしお嬢様がよろしければ俺は全然大丈夫っす」


俺が言い切る前にお腹の音。
周りを見渡してしまった。


「あ、お嬢様だったんだ」


「幸平、なんか作ってやれ」


「はい、了解っす」


今はランチタイムも終わって店も一旦落ち着いた頃。先輩たちも休憩だし、今ならチャンスだ。


「なんか作りますんで好きな席に座って待っててください」


厨房に向かう。
簡単なやつでいいかな。
かぼちゃスープと肉と野菜たっぷりのオムレツ、それからフランスパン。
こんな感じでいいかな。


卵を割りながら、お嬢様を見る。
あんな寂しそうな顔、初めて。
婚約者はどうしたんだろう。
バリ島の結婚式の件も。


そんなことより、今は調理。
美味しい料理を作らなきゃ。


それが今の俺に出来る唯一のこと。

■筆者メッセージ
Kohさん
お久しぶりです。
余震の回数が1000回を超え、まだ油断できない日々が続いていますがこっちは毎日できる限り笑顔で、そして前向きに過ごせるようにしてます。

この作品を完結まで御付き合いしていただきますようこれからも応援よろしくお願い致します。

感想お待ちしております。
ガブリュー ( 2016/05/14(土) 00:02 )