05 スペシャルは難しいもの。
「で、うちを借りるわけ?」
「悪いね。借りてます」
とりあえず練習をせねば。
俺にはもう時間が無いんだ。
東京に来て親しくなった入山杏奈。
キッチンは借りてます。
それから試食もしてもらおう。
「よし、こんな感じかな」
店のハンバーグをモチーフにしたオリジナルソースのハンバーグを作ってみた。
ハンバーグなら誰だって好きだろうし、何より俺の大好物。作るならハンバーグだ。
「食べてみて」
出来立てを杏奈の目の前に出す。
箸で切ってそれを口に運ぶ。
「うん。超がつくほど普通」
「かぁーー。もう俺は終わりだ」
床にゆっくりと倒れる。
テーブルには試作品のハンバーグ。
これでちなみに本日5度目の挑戦。
お嬢様が来るのは明後日。
絶対このままじゃ間に合うわけない。
「普通に美味しいんだけどね」
「スペシャルなハンバーグってもうどうすりゃいいのか分かんねーし。ほんとになんかない?こうした方がいいよ、とかさ」
「私、料理はあんまり分かんないし」
「あぁぁぁ。誰か殺して」
冷蔵庫の中に入れてた水を飲もうと勢いよく開ける。その時に頭に何かが当たる。
「生ハム?」
なんだ、生ハムか。
俺は君じゃなくてハンバーグの…
「これだ。やっときた!」
「え、何が?」
今日6回目のハンバーグ。
もうそろそろ完成させたい。
理想のハンバーグ。
お嬢様が笑顔になるハンバーグを。
「ここを、こうして…」
フライパンで蒸し焼き。
焼き色がつくまでじっくりと。
そして、特製のデミグラスソース。
ハンバーグの上にかけていく。
「よし、出来た」
そろそろ杏奈も飽きてる頃。
勝負に出ないとそろそろヤバい。
さて、どうなる。
「いただきまーす…あれ?チーズだ」
そう、今回は中にチーズ入り。
それにひと手間工夫も加えた。
「あっ、美味しい」
「よし!出来た。これで勝負だ」
俺の理想のハンバーグが完成した。
あとはお嬢様が来る明後日を待つのみ。
クソ先輩、新田さん。
俺もやれば出来るって教えますよ。
それからお嬢様。
「美味しい」って言ったら嬉しいな。