12 お嬢様からの招集。
「で、結局来ちゃったよ」
原付に乗って代々木公園まで来た。
知り合いに譲ってもらったこの原付。
なんだかんだ使いやすい。
譲ってくれた友達の家に預けてきた。
「あら、ちゃんと来てたのね」
すぐにお嬢様が現れた。
女優帽に青いワンピース。
そして少し高めの白のハイヒール。
「俺、休みだったんすけど」
「いいじゃない。気分転換よ」
休む日と書いて休日です。
お嬢様、言葉の意味分かってます?
「んで、何用でしょうか?」
「今日1日、私に付き合って」
はぁ?
いや、何言ってんすか。
俺はもう帰る気満々でしたけど。
ラーメン屋に行こうと思ってたのに。
「いや俺、お昼食ってないす」
「ランチぐらい奢ってあげるけど?」
なに!
それマジで?こんないい話ないよ。
昼飯代が勝手に浮くとか。
「どうするの?」
「あ、はい。行かせていただきます」
昼飯に釣られるなんて。
俺も単純になったな。
どこに行くかも分からないのに。
「あらそう。ありがとう」
お嬢様がにこりと微笑んだ。
この笑顔は綺麗だと思った。
お嬢様の笑顔はこんなに綺麗なのに。
俺はこんな風に笑えるのかな。
愛想笑いだけしか出来てないかも。
笑うのも忘れかけてたと思う。
「じゃあ、行きましょ」
「いや、どこ行くんすか」
「案内して。あなたが」
はい?
なにそれ。決めてなかったの?
お嬢様、無計画すぎるんですけど。
案内しろって言われても。
俺もゆっくり歩いたことも無い。
とりあえずぶらりと歩こうかな。
お嬢様に負担がかからないぐらいに。
「分かりました。行きますか」
ゆっくりと歩き始めた。
今日の天気は晴れ。
雲ひとつない清々しい晴れだ。
お嬢様に出会った日のように。
気持ちいい散歩日和だ。
でも、やっぱ帰りたい。
帰って日向ぼっこしたい。
日向ぼっこしながら、昼寝したい。
ガブリュー ( 2016/03/29(火) 00:01 )