02 それ、マジっすか。
「おはようございます」
「おはよ、松岡」
昨日の飲んだあとに雅史の部屋に泊まったまりや。冷蔵庫の余り物から朝ごはんを作ってくれている。雅史はあくびをしながらソファに座ってテレビの電源をつける。
テレビから流れる元気な声。司会者はタレントでテレビでもよく見る女性タレント。
控えめな性格で本業はアーティストなのに、ダンスはほとんどできない。アーティストじゃなかったら、お天気キャスターが似合いそうな女性タレントと男性司会者が進行を続ける。
「こぉら、何見てんのよ」
朝ごはんを作ってきたまりやは、テーブルにホットケーキを置くと雅史と同じようにテレビに目を向ける。テレビで特集されてたのは、人気の旅行先のランキング。
「ふぅん、旅行かぁ。旅行行きたい」
「俺もっすよ。でも、富山の綺麗な海はどこにも負けないくらいいい場所っすよ」
「去年の夏に富山行ったじゃん。でも、夏の花火大会はすごく綺麗だったな」
「じゃあ、今度はどこ行きます?会社ももうすぐ盆休みだし、またどこか行きますか?」
「んー…」
ホットケーキにフォークを刺して口まで持っていく。テレビから司会者の声が流れる。
「今、キテるのは北海道!恋人がいるあなた、子供がいるあなた、どんなあなたでも北海道だったら絶対楽しめます」
無言が流れる。まりやはフォークをそっと皿においてテレビに釘付けになっている。
「松岡」
「北海道はやめよう」
「なんでっすか?」
「言ったでしょ、ありきたりは嫌だって。だったら、ちゃんと行くべき場所に行こう。アタシの実家に」
「へ?」
突然の実家訪問を提案された雅史の開いたままの口は驚きを抑えきれずにアングリと開いた口が閉じることは無かった。