06 結婚式、本番。
咲良が退職して3ヶ月後のクリスマスイブ。ついに二人の結婚式の日になった。
なぜに24日かというと、25日は予約が一杯になりそうだったのであえてこっちにした。司会は翔伍がしてくれることになった。
「あー、緊張する…」
控え室でタキシードに着替え終えた。式まではあと数分。そろそろ咲良もドレスに着替え終わった頃だろうし、咲良のもとに向かう。
「咲良ー。着替え終わった?」
「終わったよ。入って」
ドアを開けると純白のドレス姿で手にはブーケを持った咲良が現れる。綺麗だ、素直にそう思う。ゆっくりと咲良の近くに歩を進める。
「咲良、綺麗だよ」
「ありがとう。雅史も素敵だよ」
咲良は椅子に座って、少し大きくなったお腹を右手で優しくさする。雅史が試しに耳を近づけても音は聞こえなかったが、確実に育っていることが嬉しかった。
「すみません。もうそろそろ式が始まりますのでご準備をお願いします」
係の人が咲良の部屋まで呼びに来た。急いで最後の準備を済ませてドアの前に立つ。
「それでは、新郎新婦の入場です」
扉が開いて、スポットライトが二人を照らす。照らされた瞬間に周りから拍手が起こって席まで歩いていく。翔伍も李奈も2人を祝福するかのように拍手をしている。翔伍に至っては、足元に用意していたかごを手に取って作り物の花を俺達の周りに投げる。
「雅史、おめでとー!」
「咲良、すごく綺麗だよー!」
二人を祝福する声。席に座ってスマホで撮影する友人たちに会釈しながら進む。
「ったく、翔伍のヤツ。どんだけ呼んでんだよ。いいって言ったのに」
「いいじゃない。少ないより多くの人からお祝いしてもらえるなんて幸せだよ」
笑顔で会釈して、ようやく席に。
翔伍が改まって挨拶を始める。
「えー…私の親友であり、永遠のライバルでもある松岡雅史くんとその雅史くんの仕事場の同僚でした咲良さんの結婚式。会場にいらっしゃる皆さん、もう一度大きな拍手をお願い致します」
雅史たちの目の前には橘を始めとした東京エクスの社員たち。それから、翔伍と李奈が呼んでくれた高校、中学の同級生。もちろん、バカ4人組も忘れてはいけない。
「先輩、カッコ良いっすよー」
「さすがだわ、あんな綺麗な人と」
「本多狙ってたんだもんな」
「は?ちげーよ。それは別に酒井が勝手に言い出したことだろ。俺は別に…」
「よしよし、いい子いい子。本多はすぐに隠したがる照れ屋さんだから」
「酒井、お前ぶっ殺すからな」
まぁバカ4人組はどうでもいいとして一旦は置いておこう。
「あ、先輩…」
「なに?どうかした」
「あ、いや。何でもない」
平然を装いながら李奈と同じテーブルで座っているのは、大学を卒業して以来久しかったかつての先輩、山本彩だった。
李奈が呼んだのか?それとも別の誰か?
いや、もう考えないでおこう。
とにかく、この式を楽しもう。
そう決めて、正面を向き直した。