遠恋









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第4章
10 タブー。
朝日が瞼を閉じている目に当たる。ゆっくり瞼を開くとなぜかベッドの上。家に帰った記憶は残ってない、というかここはまりやさんの部屋じゃないか。


昨日あれからどうなったんだっけ。たしかまりやさんと飲んでて何気結構お酒入って、それから…だめだ、思い出せない。


なんで、上半身が裸?
まりやさんもいないし。何これ、怖い。


ベッドに入れていた左手の指先に何か柔らかいものが当たる。布団をめくっておそるおそる覗いてみると、細くて白い腕。
よく見覚えのある女性の腕。


隣には熟睡しているまりやさん。
どうやら、俺はとんでもないヘマをやらかしてしまったみたいだった。


お酒に酔った勢いでまりやさんと…
いや、絶対にそれはない。


思い出せ、どういう感じだ。
どうやってこういう感じになったんだ。


頭を抱えて考えていると、まりやさんがあくびをしながらようやく目を覚ました。


「ん…おはよ、松岡」


「おはようございます、まりやさん」


どうしたことだ。
酔った勢いでまさかやるとは。
記憶も残ってない、酒は恐いものだ。


「あの、服を着ませんか?」


「んー…楽だからこのままでいい」


布団に潜り込んで、眠り始める。
もしも、昨日の酔った勢いでまりやさんと一線を超えてしまったなら当然まりやさんだって何も身につけてないはず。


モデルみたいな細い足も、綺麗な形をした胸もそのままで…もうやめよう。


布団からまりやさんの顔だけを出して、今日の今後の予定を話し合う。お互いの今日の予定は一つだけ共通だった。


「会社、休もう」


今回ばっかりは無理だ。
課長に電話する。夏風邪をひいたなんて言ったら、特に気にもとめておらず気にしてないようだった。


「松岡、激しすぎ。こっちがもう腰が痛いくらい。何回もイっちゃった」


「ちょっ、何言ってんすか」


「でもすごく気持ち良かった。合計で3回ぐらいしちゃったけど、覚えてる?ま、どうでもいっか。シャワー浴びてくるね」


全然どうでもいいなんてない。
覚えてるわけないっすよ。
昨日の記憶も曖昧なのに。


まりやさんは床に落ちてたタオルケットを身体に巻いて浴場へ向かっていった。俺は一人残されたベッドの上で考え続けていた。

ガブリュー ( 2015/12/30(水) 01:29 )