遠恋









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第4章
03 まりやさん。
翔伍が交渉して、貸し出されることになった別荘に着くと、一番最初に松田が車を降りて周りの景色に感激して叫んでいる。それから、ぞくぞくと降りていく。


「うわ、スッゲェ!翔伍先輩、なんすか。こんなとこ知ってたなんて、もうマジで最高っすよ」


目の前には海、周りには木。バーベキューをする場所にしては最高の条件が揃ったとっておきの場所、と言っても言い過ぎではない。


「よし、係を分担すっか」


荷物を下ろして、準備を行う際の恒例の係決め。翔伍はバカ4人組のうちの松田と荒木で炭火焼の用意。本多と酒井は釣竿を持って釣りに出かけていった。


残ったのは、俺とまりやさんと李奈と咲良。咲良は翔伍に呼ばれていった。たぶん、手際が良いから翔伍のヘルプ係だろう。


「雅史、野菜買ってきて」


「はぁ?マジかよ」


「車貸すからさ。近くのスーパーまで玉ねぎとキャベツ、それから焼肉のタレ3本くらい。よろしく、じゃあな」


「ったく、翔伍のヤツ。買出しはいっつも俺に頼みやがって…」


愚痴を言いながら、車に乗り込む。
俺と同じタイミングで助手席に1人誰かが乗ってくる。


「まりやさん」


「松岡、アタシも連れてって」


「いいですけど。どうせ買出しなんで、すぐに終わりますよ。どうせなら、ここに残っててもいいんすよ」


「いいから、ほら早く」


「分かりましたよ。李奈、翔伍の手伝いをしてて。すぐ戻るから」


車を出して、スーパーに向かう。
まりやさんがスマホを操作して、運転してる俺を撮影し始めた。


「ちょっと、やめてくださいよ。なにしてんすか。写真撮らないでください」


「課長とか将太さんに見せよーっと。松岡のこんなの結構新鮮だから」


くそっ、まりやさんめ。
何かあれば俺を振り回して。


気づけば、俺は、笑いながらまりやさんと話をしていた。こんなに振り回されてまりやさんのマイペースっぷりにいつの間にか捕まってる。


撮影しながら笑っているまりやさんに、俺は苦笑いして左手で後頭部を掻く。


「まりやさんには、勝てないっすよ」

■筆者メッセージ
もうすぐ、この作品が『花火』の閲覧数を超えます。ほんとにありがたいです。

ご愛読、いつもありがとうございます。

感謝いたします。

感想お待ちしております。
ガブリュー ( 2015/12/20(日) 22:15 )