02 移動。
翌朝、車を手配してマンションの下に止めて今回のメンバーを待っていた。
バカ4人組と李奈は来たから、あとはまりやさんと咲良だけ。
「まだかな、雅史」
「もうちょっとで来るとは思うけど」
そう話してた直後に、咲良とまりやさんがやってきた。まりやさんが俺を見つけて、大きく手を振ってきた。
「ごめんね、松岡。咲良がなかなか出てこなくて、遅くなっちゃった」
「いいっすよ。じゃ、行きますか」
全員車に乗り込む。運転席に翔伍、助手席に松田が乗り込んで出発する。俺の席は、まりやさんと李奈に挟まれる形になった。
「あ、松岡が隣だ。松岡だったら、いたずらぐらいしてもいいよね」
「ちょっと、まりやさん。狭いのに、やめてくださいって」
「ふふ、ヘタレ松岡」
横から指で身体をつついたり、髪の毛をいじったりしてるまりやさん。李奈は笑いながら俺とまりやさんを見ていた。
「お、元カノさんが笑ってる。アタシに共感してくれるんだね。さっすが」
「あ、雅史が職場だったらこんな感じなんだなあって思うと面白くって。雅史、富山にいた頃はカッコつけてるクールキャラなんです。真面目すぎて、いっつも空回りしてて」
「おーい、李奈。それ以上は…」
これ以上は俺も耐えられん。この2人に挟まれてるようじゃ、おそらく俺は身が持たない。咲良に助けを求めようとも、バカ4人組のうちの3人の相手をしてるし、無理だ。
「高速来たぜ、シートベルトしろよ」
翔伍の言葉で、シートベルトを締める。
俺の左手が、シートベルトをつけたまりやさんの右手と触れる。まりやさんは微かに頬を赤くして急に目を合わせなくなった。
「ちょっ、なんすか。急に黙り込んだりして、まりやさん。聞いてます?」
「うるさい、バカ」
「バカって言わんといてくださいよ。俺こう見えても傷ついてるんすよ」
「雅史、飴食べる?」
李奈が飴を差し出してきた。それを受け取って口の中に投げ入れる。
「サンキュ、李奈」
「バーベキュー、楽しみだね」
「あぁ、そうだな」
高速道路の途中で、看板が見えた。千葉県に入ったみたいだ。一息ついて安堵する。突然、眠気が襲ってきて俺は静かに目を閉じて眠り始めた。