14 必死なまりやさん。
「課長、すみません」
「ええ?どうしちゃったんですか?まりやちゃん。急に謝ってきて」
3日後。朝のミーティングのあとにまりやさんは課長に謝罪していた。たぶん、あの山口夫妻の本の話が進んでないのだろう。
「どれだけ話をしても奥さんが嫌って言い続けてしまってどうしても話が進まないんです。もし、書籍化するんだったら離婚するって言い始めてしまって…」
「え、マジで。それ」
翔太さんが驚いている。当然だ、離婚なんて大きすぎる話だ。
「はい、私のせいです。すみません」
「まりやちゃんのせいじゃないですから。うん、なるほどですね」
「今日、旦那さんとの方に昼休みになんとかアポは取れたんです。もう一度私が説得します」
「じゃあ、僕も一緒に行きますよ。僕からも話をしておきたいので」
淡々と話が進む中、俺は立ち上がって自然に課長に直訴した。
「課長」
「おや、松岡くん。どうしました?」
「自分も山口さんとのアポに行かせてもらっていいですか?お願いします」
「雅史、お前本気か?」
翔太さんが俺に聞いてくる。ただ俺は、はいとは言わずに、一度頷く。
「分かりました。松岡くん、よろしくお願いします」
「はい、分かりました」
課長は俺を見て、小さく頷いていた。