第六章『確証』
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 家に戻ると元看護士の姉がいた為、彼女に緒方の手当てをお願いした。

 ただの喧嘩傷ではあったが、プロフェッショナルの手捌きで、とても丁寧に処置を施してもらった。

 処置が終わった後、自室に招いた篠田は、緒方の正面に座り、彼に何があったのかと尋ねた。

 彼は少し答えることに躊躇っていたが、真っすぐに見つめてくる友人の目に、ゆっくりとその口を開いた。


「お前がSOULから離れたこと、足木さんに話したんだ。もちろん、お前が元々メンバーに入っていなかったつもりだったのは分かってるんだけど。一応、いろいろと関わってたからよ、もうお前には関わらないでくれって頭下げたんだ」

「緒方…」


 自分の信じているものを否定され、一度は篠田に裏切られたという気持ちでいっぱいだった緒方だったが、彼の最近の変化を目の当たりにして、少しずつ彼の心情を理解しようと彼なりに考えて動いたとのことだった。

 だが簡単には関わりを断ち切らせてくれないのが半グレ集団というものであり、頼みを聞いてほしければ、結果で行動を示せと仕事を与えられた。

 それは今まで緒方が行ってきた中で最も過酷で、最も危険なものであった。

 絶対に失敗が許されない案件であったが、最後の最後でしくじりを犯してしまい、その報復としてSOULのメンバーから袋叩きにあってしまったのだった。


「そんな…。なんでお前がやられなきゃいけないんだよ。足木って人は、お前のこと可愛がってくれてたんだろ?なのに、なんで…!」

「あの人はそういう人なんだよ。どんなに身近な人間でも、使えないと判断したら簡単に切り捨てる」

「それでもお前はあの人についていくのか?」


 篠田からの問いかけに、緒方は黙り込んでしまった。

 自分のせいで彼をこんな目に遭わせてしまったことに篠田は責任を感じていた。


「俺が話をつけてくるよ」

「やめろ、話が通じるような人じゃない」

「でも元はと言えば俺が…!」

「お前にはもう関係ないんだよ!」


 彼の言葉を遮るように緒方が大きな声で怒鳴り声を上げた。

 その声は部屋のドアをすり抜け、廊下の先にまで響き渡っていた。


「あの耳の聞こえない女の為に、将来まで考えてるんだろ。だったら今こんなことで、お前の進路潰すわけにはいかねえだろ」


 緒方の言葉に、篠田は反論できる言葉を返すことが出来なかった。

 黙り込んでしまった彼の前から立ち上がって、座ったままの彼を見下ろしたまま話した。


「そもそもお前を巻き込んだのは俺なんだ。だからこの責任は俺にある。お前は気にすんな」

「でも…」

「それじゃあ、幸せにな」


 そういって部屋を出て行った彼を篠田は追いかけることが出来なかった。

 もう二度と彼とは会えなくなってしまうような、そんな気さえしていたが、なぜか重い足を持ち上げることが出来なかった。

黒瀬リュウ ( 2021/11/08(月) 17:00 )