02
少女二人に連れられ、篠田はセンター街奥にある小さなカフェにやってきていた。
カフェというよりかは喫茶店という表現の方が近いような店の雰囲気で、女子高生二人がこのような場所によく来るものなのかと彼は少し驚いていた。
「どうぞ、こっちに座ってください」
ロングヘアーに案内され、篠田は四人がけの席に、二人はその対面に並ぶように座った。
ウエイトレスにオーダーを聞かれ、ロングヘアーはメロンソーダと即答し、トリケラトプスの彼女にも手話で尋ねると、彼女も頷いたため、二つでとすぐに訂正した。
「あっ、じゃあ、俺はアイスカフェオレで」
「かしこまりました」
ウエイトレスが立ち去った後、ロングヘアーが目を丸くしてこちらを見ていることに気づいた。
「な、何か・・・?」
「見た目の割に、随分なんとも言えない物を頼むんですね」
「どういうこと?」
「いや、なんかお兄さんの見た目だとコーラとかエナジードリンクとか甘いもの系か、あるいはそのギャップでブラックコーヒーとか渋い物を頼みそうなのに、アイスカフェオレってなんか、どっちとも取れないような中間を取ってきたのにビックリしちゃって」
明らかな偏見でしかないが、金髪で周りからはよく怒っているのかと聞かれるほど無愛想な表情をしているので、そう感じてしまうのが一般的なのだろうと、篠田は複雑に思いながらも納得しようとした。
「あっ、改めまして、私は金村美玖と申します。この子は小坂菜緒。私たち二人とも日向坂高校の高校2年生で、この春に3年生になります」
「あっ、どうも。えっと、俺は篠田葵。野田高の高2」
「えっ、あれ、もしかして同い年ですか。じゃあ、堅苦しい感じはなしで行きましょう」
金村の急な距離感のつめ方に少したじろぎながら、篠田はチラッと横に座ってメニュー一覧をずっと眺めているトリケラトプスの少女を見た。
「あの、実は引き止めたのには理由があって」
さっきまでのフランクな感じとは打って変わって、金村が両手を膝に置いて、篠田のことをじっと見てきた。
それに気付いた篠田も彼女に釣られ、思わず姿勢を正す。
「菜緒の、友達になってもらえませんか?」
「はっ?」
「もちろん唐突なことで驚かれるのは分かっています。でもそこをなんとか!」
「いやいや、待ってくれよ。驚くとか以前に、話が全然見えてこないんだって。なんで今日初めて会った俺なんかと友達に?」
金村は小坂の方に顔を向けると、彼女の肩を優しく叩いて、彼女に何か手話で話しかけた。
彼女が伝え終わると、小坂は少し悩んでから、首を少し横に振りながら、手話で返してきた。
「うん、わかった。あの、とりあえず今は、何も理由は聞かないでください」
そう言って金村はお願いしますと頭を下げてきた。隣ではトリケラトプスの少女が心配そうにこちらを見つめてきている。
理由もなく突然友達になってくれと言われた経験がこれまで無かったため、どう反応したらいいか篠田自身分からなかった上、何より女子高生に頭を下げさせているという状況が周りからどう見られているのか、そちらの方が気になって仕方がなかったため、篠田はその日2回目の渋々の承諾をした。