第一章
02
 19:00、就業時間を少し過ぎてしまった彼女は、支店長から注意を受けた後、ロッカールームで自身の私服姿に着替え、職場を後にした。
 少し歩くと銀行近くにコンビニがあるのだが、店先に蹲っている、まるで欲しかったお菓子を買ってもらえなかったような少年のような人物がそこにはいた。

「"先帰ってて"って言ったのに」
「ゆうちゃんを一人で帰らせるわけないでしょ」

 待ち人をようやく見つけ、嬉しそうに立ち上がったのは岡田奈々。彩希とは高校からの同級生であり、ルームメイトでもあり、そして恋人でもあった。
 幼い頃にとある事がきっかけで"男性"という存在に対して、無条件に恐怖心を抱いてしまっていた彩希を優しく受け止め、そして包み込むように抱きしめてくれたのが、奈々の存在だった。

「今からご飯だから、作るの遅くなるよ」
「じゃあ、久しぶりに外食でもどう?」
「だめ、こないだテレビ買い替えたばっかだから、今月は節約しなきゃって、こないだ話したばっかりでしょ」

 仕事場では淡々とした口調で話す彩希も、彼女の前では自然体の姿でいることができた。彩希自身もそれが心地よかったし、幸せに感じていた。
 はぁいと返した奈々は、そっと彩希の手を握ると、何か変わるわけでもなく、そのまま一緒に歩き続けた。彩希もそのことについて言及するわけでもなく、ぎゅっとその手を握り返すと、ただただこの幸せが続くように祈りながら、街灯が薄暗く照らす夜道を、二人並んで歩いて行った。

■筆者メッセージ
ゆうなぁCP、最強説。
黒瀬リュウ ( 2020/10/13(火) 23:16 )