第二章『unbalance』
02
そんな彼女が唯一、校舎に足を運ばせたときに、心が躍らせる存在がいた。

玲奈がいる一年一組の担任である内藤青志だ。

玲奈とは年はおよそ十ばかり離れていると聞いたが、どこか幼げなルックスで、だが少し頼りなさげな感じが、彼女の中の母性本能をくすぐらせていた。

彼に会うことこそが、学校へ通うことへの今の楽しみ。且つ心の支えでもあった。


「先生」


廊下で見かけた彼の背中に呼びかけると、男はゆっくりと振り返り、玲奈の姿をとらえた。


「あっ、加藤さん」

「こんばんわ、先生」

「こんばんわ。1カ月ぶりですね」

「うん。映画の撮影でしばらく来れなかったんです」


彼の横にぴったりとくっついた玲奈は、嬉しそうに頬を緩ませながら、その横を歩いた。

■筆者メッセージ
なんやかんやあって、更新できずにいました…。
今日からまた頑張りますよ。

作品に関するご意見やご感想、その他等々のコメント、またリクエストなど、引き続きお待ちしております。
黒瀬リュウ ( 2017/08/09(水) 22:01 )