第一章『絶対命令』
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久々に再開した親友の姿は、あまりにも変わり果ててしまっていた。

目の下には大きな隈ができており、筋肉質だった体もすっかり痩せ細っていた。

彼の姿を見て、俊哉は心がぎゅうっと締め付けられる思いだった。


「太輔、すまない」


彼と顔を合わせるなり、俊哉はまず頭を下げた。

彼に殴られても仕方がない。その覚悟であったが、返ってきたのはいつもの優しい声だった。


「仕方ねえよ、きっと中井に脅されたんだろ?」

「まあ・・・」

「お前を巻き込むわけにはいかないよ」

「だけど、元はといえば俺のせいで・・・!」


自分自身を否定しようとした俊哉を、太輔は目で制した。その眼はまるで「それ以上は言うな」と強く訴えているようだった。


「悪い・・・」

「謝るなって、お前は仕方がないんだから」

「ありがとう、太輔」

「いや、俺もお前のことを守れてよかったって、心から思えてるんだ」

「これからどうするんだ?」


学校に登校しないことを一番案じていたのは俊哉自身だった。


「とりあえず今はバイトしてる。朝と夜で」

「家族のことが、あるもんな」

「まあだから、朝も働けてラッキーかなって。ポジティブに考えてるよ」


ポジティブでいいのかと少し疑問に思いながらも、彼がそれでいいならと俊哉は小さく頷いた。


「だけどさ、やっぱり高校には行けって。母さんが」

「お母さん、まだ体調優れないのか・・・?」


彼の母親は胃癌で入院を余儀なくされていた。


「見舞いに行ったら、一発でバレたよ。学校行ってないこと」

「でも、今行くと、また中井から・・・」

「頑張るよ。兄弟たちも学校に行ってるんだ。兄ちゃんが行かないでどうすんだって話だよ」

「そうか、なんか俺に出来ることはないか」


そう尋ねると、太輔は優しい笑顔で首を横に振った。


「お前はお前のために生きろ。人のために生きるのは、俺だけでいい」


そう優しく微笑んだ彼の瞳には、少し以前のような輝きが取り戻されていたように感じた。

その輝きにホッとした俊哉は、固い握手を親友と交わし、その夜は分かれることになった。

そしてそれから二日も経たない間に彼の耳に飛び込んできたのは、太輔が屋上から飛び降りたということであった。

■筆者メッセージ
今回は誤字ないですよね?ね?

作品に関するご意見やご感想、その他等々のコメント、またリクエストなど、お待ちしております。
黒瀬リュウ ( 2017/06/27(火) 16:34 )