第一章:大都会東京
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 それから数時間後。向井、井上、横山の三人は川沿いにある土手に座っていた。それぞれ向こう岸を見つめたり、下にある小石の形を観察したり、煙草を吸いながら橋を渡る人たちを観察したりと別々だったが、頭の中に思い浮かべていることは三人とも共通していた。
 すると曲がり角から村岡が現れ、彼らに手を振ってやってきた。

「みんな!お待たせ!」
「村岡さん!どうでした・・・?」
「無事、母の入院が決まりました」
「よかった、やりましたね!」

 彼らは立ち上がり、村岡のもとへと集まった。村岡が橋のほうへ歩き出したため、彼らもそのあとに続いた。

「いやあ、ホント救急車の中は冷や冷やものでしたよ・・・」

 向井と一緒に救急車に乗り込んだ横山がそう呟いた。救急隊に素性がばれたりしないかどうか気が気でなかったらしい。
 すると何かを思い出したかのように、彼女は向井に尋ねた。

「そういえば、なんて書いたんですか?」
「何がや?」
「救急隊の人にカルテに病名書いてくださいって頼まれたとき。ドイツ語で何か書いてたじゃないですか」
「ああ・・・。“ダンケシェーン”」
「えっ、どういう意味?」

 すると彼の言葉を先に理解した村岡が代わりに答えた。

「“ありがとう”ってこと」

 それを聞いた彼らは思わず笑みがこぼれ、笑い声をあげていた。


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黒瀬リュウ ( 2016/06/29(水) 13:18 )